奥田英朗奥田 英朗 『最悪』 ================================= 不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、 取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の 問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱み を握られた。 無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。 比類なき犯罪小説(amazonレビューより) ================================= レビューにもありますが・・・とにかく転がる転がる(笑) このスピード感、疾走感、それも悪い方へ悪い方へと駆ける感じは 昔、好きだった筒井康隆氏の初期のスラップスティックな作品を 思い出してしまいました^^; ただし、前衛的でドタバタシュールの趣があった筒井氏の作品と 違い、『最悪』のほうは現実世界のリアルさが加味されてて 、それなりに身につまされるところも多かったです。 (零細工場の主の悲哀あふれる生活は、我が家にも当てはまるので(涙)) しかし・・・・どんどんどんどん「あ~あ、そっちにいっちゃダメ でしょ」という展開。 どうにもイライラしてきて、「幻夜」に引き続き途中で手放して しまいそうになりました^^; が、後半部はサクサクと進み、なんとかゴールまで付き合えて 一安心(^^) 途中のイライラ感のわりには読後感はスッキリです。 なぜだろ~?(?_?) この疑問を解明するためには、彼の他の作品を、もっと読むしかないかも。 「東京物語」 ================================= 1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンも トム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、 上京する。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、 幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊...。 バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも 少しずつ大人になっていく久雄。80年代の東京を舞台に、 誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、 まぶしい青春グラフィティ(「BOOK」データベースより) ================================= あった、あった、そんなこと! と、本を読みながら、何度も、思わずニヤリ 若き日のことを懐かしく思い出す一冊でした。 1959年生まれ、雑誌編集者やコピーライターを経て作家 になった著者、奥田英朗さん。 きっと、彼自身の経歴とかぶってるところも多いんじゃ ないかな? 同じ50年代生まれの私としても、非常に共感できる思い出 の数々・・・・・ 懐かしい昔のアルバムをめくるような、気恥ずかしさと 甘酸っぱい思いが交錯するタイムトリップをしているような 、そんな気分にさせられる作品でした 特に第2章「78年春本番」は、東京に上京した頃の自分 の姿をオーバーラップさせられて「そうそう、そうそう!」と 頷きモード全開~☆ 主人公久雄が初めての一人暮らしで、最初に買ってきた のがテーブルとファンシーケース! 「ファンシーケース」なんて、お若い方は、なんのこと? と分からないのでは~? ビニール製の衣装ケースのようなものだけど・・・・ 我が家の新婚時代も、このファンシーケースのお世話に なりましたさ~(^m^) あと、カラーボックスも大活躍。 窓には手縫いのカーテン、ゴミ捨て場で拾ってきた本棚 を白く塗って靴箱にしたり・・・・・ お金がなくて、いつもピーピーしてたけど、狭い6畳間に 仲間が集まって、徹マン(←徹夜麻雀^^;)に明け暮れた 毎日、懐かしいぃぃ~(笑) 初めての都会生活に、田舎モノと知られないよう アイビールック(キャー、これまた懐かしい(≧∇≦*))に 身を固め、渋谷や原宿をドキドキしながら歩いたりする 久雄の姿にも自分の昔を重ねられるし・・^^; いまでは、東京と地方の差はそれほど感じられなくなって きたように思うけど、あの当時、地方に住んでる者に とっては「東京」って憧れの別世界だったのよね。 後半の、仕事を重ねながらの久雄の成長記にも、非常に 感情移入できるシーンが山盛りでした。 40代、50代の方が読んだら、ノスタルジックなヒトトキを 味わえること間違いなし☆ 30代以下のお若い方には、80年代の東京の匂いが肌に 感じられる一冊だと思います。 私にとって、奥田氏の本は『最悪』に続いて2冊目。 『最悪』はドンドンと突っ走るようにエピソードが積み重ね られて、まさしく最悪の事態にまでなるんだけど、読後感は 何故かしら、とても爽やか~♪ 今作も、青春のほろ苦さを、実にたくみに積み上げていく 手法が、とても魅力的でした! 『空中ブランコ』 ================================= 人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病の プロ野球選手。困り果てた末に病院を訪ねてみれば...。 ここはどこ?なんでこうなるの? 怪作『イン・ザ・プール』から二年。 トンデモ精神科医・伊良部が再び暴れ出す。 (「BOOK」データベースより) ================================= う"~ん、快作であることは確かなんですが・・ どうにもこうにも、伊良部医師のキャラ設定が気になって、 話にのめり込むことが出来ませんでした^^; コメディなんだから、もっと気楽に読めばいいと思うんですが ......最近、頭が固くなってるせいでしょうかね~(-"-) 現代社会にありがちな症状を抱えた患者を笑い飛ばすように 、次々と強烈な治療(?)を繰り出す伊良部医師。 ある意味、痛快といえば痛快! 現代社会のネジレ部分を実に的確についてて、いちいち納得 できます。 でも......話の展開が少々類型的すぎるのが気になって(+_+) でも、これって、奥田氏、「確信犯」かも~。 一般読者に受け入れられやすいよう、とても上手にユーモア をまぶしながらの話展開! 以前読んだ『最悪』もそうでしたが、うんざりするくらい あくの強いキャラクターが大勢出てくるのに、不愉快になる 一歩手前くらいのところで程よく押えられて、読後感は なぜか爽快! 伊良部シリーズも、本質的な「悪」というものとは縁遠い から安心して読めるのかも。 そういう面では、ホントに職人技だと思います。 ただ、私の好みからいくと× したがって、『イン・ザ・プール』のほうはパラパラと飛ばし読み しちゃいました^^; 面白いことは面白いんですが・・・ 好みの問題は、いかんともしがたし~┓(´_`)┏ 「ウランバーナの森」 以前読んだ「東京物語」でも感じましたが、奥田氏って根っからの ビートルズファンなんでしょうね! ビートルズに対する熱い愛情を感じます☆ レノンをモデルにしたお話ですが、日本のお盆を絡めながら巧みに作り 上げられてて、とてもデビュー作とは思えない出来映え! 特に便秘のシーンは後々の伊良部シリーズを思わせる出色の出来では?(爆) Designed By チワワン子
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